急速な高齢化と生活の欧米化によって、心臓病が急増しています。その結果、心筋梗塞・心不全・不整脈といった心血管疾患は癌に次いで日本人の死因の第2位となっています。当科はそれら心血管疾患に対する最先端の治療を提供するだけでなく、その発症に深く関わっている生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化)に対する治療にも重点を置き、心血管疾患の予防にも携わっています。
疾患名 | 内容 |
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心不全 |
心臓は血液を巡らせるポンプであり、血液を汲みあげたり、送り出したりする働きが不十分な状態が心不全です。息切れ・むくみ・倦怠感などがみられ、体を動かすことがつらくなります。治療法は一般的な薬物治療、疾患ごとにカテーテル治療、デバイス治療を行い、多職種と連携して患者さんの日常生活を心臓病に適したものにするお手伝いをする、これを「心臓リハビリテーション」と呼びます。当科は心不全患者さんに積極的に心臓リハビリテーションを導入し、日々の運動量を決めたり、服薬指導・栄養指導を行ったり、社会福祉利用のサポートを行っています。 |
虚血性心疾患 | 心臓に酸素や栄養を運ぶ血管(冠動脈)の動脈硬化が原因となって起こる病気を総称して虚血性心疾患と呼び、狭心症と心筋梗塞とに大別されます。狭心症は一時的に心臓が酸素不足になることで胸痛発作を繰り返すもので、薬物治療やカテーテル治療が症状緩和に有効です。一方、心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まった状態であり、心臓への血流が途絶えて激しい胸痛が続くとともに、そのまま放置すると心筋の壊死が進行して命に関わる危険な状態になるため、一刻も早く専門施設に搬送して適切な治療を行う必要があります。 |
末梢血管疾患 | 動脈硬化が原因となって四肢の血流が低下する病気を閉塞性動脈硬化症と呼びます。太腿やふくらはぎが痛んで長い距離を歩くことができない間欠性跛行が典型的ですが、下肢の冷感やしびれが主症状のこともあります。閉塞性動脈硬化症のある患者さんは既に動脈硬化が全身に及んでいる場合も多いため、合わせて評価を行います。 |
静脈血栓塞栓症 | 下肢の静脈がうっ滞することで血栓ができてしまい、血の巡りが悪くなって足がむくんだり、剥がれた血栓が血流に乗って肺の動脈を詰めてしまう病気です。大量の血栓が肺動脈に流れ込むとショック状態に陥ることもあります。いわゆる“エコノミークラス症候群”も同様の病態です。薬を使って血栓を溶かす治療が中心となります。 |
心房細動 | 正常な心臓は心房にある洞結節からの電気信号を受けて規則正しいリズムで動いていますが、心房内で異常な電気信号が発生して心房が1分間に300回以上もの回数で震えるように動く状態が心房細動です。心房の中で血液が澱むため血栓ができやすくなり、脳梗塞のリスクが約5倍に跳ね上がるため、血栓を予防するために内服治療を行います。自覚症状としては動悸や息切れ・胸の不快感などが挙げられますが、無自覚のまま健康診断などで発見される場合も多くあります。心房細動と言われたら、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。 |
頻脈性不整脈 | 正常範囲を越えて脈が早くなる不整脈を頻脈性不整脈と呼び、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、WPW症候群、心室頻拍、心室細動など多くの病態があり、単に動悸を感じるものから失神に至るものまで重症度も様々です。近年これらの不整脈に対する治療はめざましく進歩しており、薬物治療のほか、カテーテルを用いて頻脈の原因となっている病巣を焼灼するカテーテルアブレーション、致死的な不整脈が起きた場合に自動診断して治療を行う植え込み型除細動器など、多くの治療手段があります。 |
徐脈性不整脈 | 正常範囲を越えて脈が遅くなる不整脈を徐脈性不整脈と呼び、洞不全症候群、房室ブロックなどがあります。脈が遅すぎても動悸・息切れや立ちくらみ・失神などの自覚症状がみられます。強い症状を伴う場合は、しばしばペースメーカーの植え込みが必要になります。 |
弁膜症 | 全身に血液を有効に送り出すために心臓には4つの“逆流防止弁”が備わっていますが、これらの弁が様々な原因によって狭くなったり、きちんと閉じなくなったりすると血液の循環が上手く行かなくなります。薬で心臓の負荷を軽くしてあげることで症状を緩和できますが、重症例では手術が必要になる場合もあります。 |
心筋症 | 心臓の筋肉自体の異常で心臓の働きが低下する病気です。遺伝的背景を持つものもあり、病態に応じた治療を行います。薬による治療が有効な場合が多いのですが、一部の重症例では酸素療法、陽圧呼吸療法、心臓再同期療法などの非薬物療法を併用し、最終的には人工心臓の装着や心臓移植を検討することもあります。 |
先天性心疾患、 肺高血圧症、 大動脈瘤、 大動脈解離、 心筋炎ほか |