頚椎インストゥルメンテーション
頚椎後縦靭帯骨化症
頚椎靭帯骨化症は、頚椎にある後縦靭帯が骨化し、脊髄を圧迫し神経障害をきたす難治性の病気です。
日本では1975年に難病指定され、現在まで原因の究明や治療法の研究が行われています。
病状が進行した場合は手術治療を行います。
一般的には、後方除圧術(椎弓形成術:後方から脊柱管を広げる手術)が行われますが、骨化が大きな方では脊髄圧迫の解除が不十分となる方もおられました。
当院では骨化の大きい方には、後方除圧固定術(椎弓形成術に固定術を加えたもの)を行うことで、従来に比べ良好な成績を収めています。
高難度手術を可能にするシステム
頚椎インストゥルメンテーションは、頚椎にスクリューを挿入して行います。スクリュー挿入にはミリ単位の正確性が問われます。脊椎ナビゲーションは、スクリューの位置をリアルタイムでモニターに表示し、正確な挿入に貢献します。
手術中の操作や体位にて、神経の障害が生じる可能性がありますが、全身麻酔中のため手足の運動を確認できません。
脊髄モニタリングは、頭蓋に電極をつけ定期的に電気刺激し、手足の筋肉収縮をモニタリングすることで、神経の状態を確認しながら手術を行うことが可能です。
低侵襲脊椎手術
内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術 (MED; Microendoscopic discectomy)
内視鏡を用いて、椎間板ヘルニアを摘出する方法です。約1.6cmの皮膚切開で手術を行います。
術後翌日より歩行が可能で、早期(術後4~5日程)の退院も可能です。
BKP (Balloon Kyphoplasty)
骨粗鬆症性椎体骨折に対する手術です。骨折椎体をバルーンでふくらまし、骨セメントを充填します。5mmの皮膚切開2か所で手術が可能です。
経皮的椎弓根スクリュー(PPS; percutaneous pedicle screw)を用いた脊椎後方手術
胸腰椎後方固定術で一般的に用いられる椎弓根スクリューの挿入は、従来は皮膚を縦に切開し、筋肉をはがし、スクリュー挿入部位を完全に露出させ行っていました。
本技術はスクリュー挿入部のみ切開し、スクリューを挿入することができ、筋肉の温存性が高く、術後疼痛も軽減することができる低侵襲技術です。
胸腔鏡 (VATS; Video Assisted Thoracoscopic Surgery)を用いた胸椎前方手術
従来の胸椎前方固定術は、側胸部に20~30cmの皮膚切開を入れ、肋骨を切除し大きく開胸して行っていました。
本技術は胸腔鏡を用いることで、約6cmの皮膚切開で肋骨を温存し、小開胸にて行うことができ、低侵襲な術式です。
腰椎側方進入椎体間固定術 (LLIF; Lumbar Lateral Interbody Fusion)
椎体間固定術は椎体間(椎間板部分)に、骨を充填したケージを挿入し、椎間板をまたいで上下の椎体にスクリューを挿入し固定する術式です。ケージを側方より挿入することで、従来法に比べ骨・筋肉の温存性が高く、低侵襲です。PPSと組み合わせ、術翌日より歩行が可能で、早期(術後7~12日)退院が目指せます。
変形矯正手術
椎体骨切り術
骨粗鬆症性椎体骨折などが原因で高度の後弯変形(腰曲がり)が生じ、痛みや姿勢維持が困難となり、生活レベルが低下している方に適応とされます。
変形の原因となる椎体の一部を切除(骨切り)することで、後弯変形を矯正し、生理的な脊椎のアライメントに近づけます。
胸腰椎矯正固定術
脊椎の広範な後弯変形が原因で、立位・歩行などの基本的な日常動作が障害され、進行すると胃酸逆流による胸やけや、腹部での通過障害なども生じることがあります。
手術では主に腰椎での変形矯正を行い、下部胸椎から骨盤まで固定します。
生理的な脊椎のアライメントや立位バランスの再獲得が目的です。
手術実績
※ 前方後方合併手術はそれぞれ記載
平成27年 (6月開院) |
平成28年 | 平成29年 | |
---|---|---|---|
頚椎後方除圧術 | 15 | 34 | 29 |
頚椎固定術 前方 ※ 後方 ※ |
9 1 8 |
16 4 12 |
18 1 |
胸椎/腰椎後方除圧術 | 14 | 39 | 45 |
胸椎/腰椎固定術 前方 (低侵襲脊椎手術) ※ 後方 (低侵襲脊椎手術) ※ |
31 8(8) 27(15) |
65 14(13) 51(34) |
97 31(29) |
内視鏡下手術 | 16 | 17 | 28 |
胸腔鏡視下手術 | 1 | 6 | 1 |
その他 | 8 | 7 | 15 |
合計 | 98 | 184 | 233 |
再手術 | 3(3%) | 3(1.6%) | 5(2.1%) |