年別アーカイブ:2019年

魚沼基幹病院 救命救急・外傷センター
救命センタースタッフが不定期、順不同で書き綴ります。

“あきらめない強い心”が起こした奇跡 ~続編~

こんにちは!

救命センター看護師の阿部と新井です。

今回は私たちが担当させていただいたSさんとの出会いについて紹介させていただきます。

 

Sさんは冬のスノーボード事故で脊髄損傷を患ってから半年近く当院で闘病された後、

地元の関東地方の病院へ転院されました。

ICU入室した直後は手足の感覚や動きも消失し、自分で寝返りを打つ事も

自分の手でナースコールを押すことも

手元のティッシュ1枚を摘み取る事さえも難しい状況でした。             

その後、幾度か大きな手術を受け、一時は呼吸状態が安定せず

人工呼吸器を装着する話も挙がるほど危機的な状態にも直面します。

 

私とSさんは同じ20代前半と年齢が近いことも重なり

受け持ち当初、いろいろと自分の身に置き換えて考えました。

私が彼女と同じ状況に立たされたらどうなるだろうか。

きっと突然の出来事に酷く失望し、生きる希望も見失うだろう。

Sさんは大丈夫なのか、と彼女の心情に思いを馳せながら

窓辺から夕陽が射し込んだある日の夕方、

Sさんのお部屋に訪室し、そっと今の心境について聞いてみました。

そこで返ってきた言葉は思いもよらぬ返答でした。

「私、頑張りたいんです。不安もあるけどなってしまったものは仕方ない。後悔よりも

今は頑張りたい気持ちが大きいんです。」彼女の意志の強さに皆、驚かされました。

Sさんの、真っ直ぐと見開いた瞳の奥には迷いの影はなく、確実に前へ進みたいという

意志の強さをはっきりと感じました。

私たちはそんな彼女の思いを汲みとり

二人三脚で共に闘っていこうと改めて胸に誓いました。

まもなく治療と並行して本格的にリハビリが開始となります。

四肢の関節を動かす運動から、血圧や呼吸の変動に目を配りながら少しずつ上体を上げていき、初めは座位の姿勢に慣らしていく時間を増やすなどリハビリはとても慎重に、いくつもの細やかな段階を設けながら進めていきました。

時には呼吸筋を鍛える特殊な機械を使用し排痰を促したりなど

理学療法士と医師、看護師で情報共有し合いSさんに合わせたリハビリプランを考えました。どんな時もSさんは決して弱音を吐くことなく

懸命に、そして着実に一つ一つのリハビリに取り組んでいきました。

そして努力の甲斐もあり少しずつ僅かに感覚や動きが戻ってきたとき

私たちは自分の身体に起きた出来事のように嬉しく、共に喜び合ったことを今でも思い出します。

時にはベッドサイドで洗髪をしながら、同世代として趣味嗜好の話に花を咲かせたり

退院後、自分の足で歩けるようになったら行きたい場所、チャレンジしたいことなど

沢山語らいましたね。

”友達と車椅子でディズニーランドに行きたい”

”ライブやフェスにも行きたい”

Sさんの隣でお話しを聞きながら彼女なら絶対行ける、どんな困難でも乗り越えられると私たちは密かにそう確信していました。

数か月の間、集中治療室で過ごされた後、一般病棟へ移られた後も

Sさんがリハビリで車椅子に乗れたこと、歩行器で歩けるようになったこと、

さらには地元の転院が決まったこと。

そんな嬉しい報告を何度か耳にしながらSさんの身体の回復と成長を陰ながら

いつも見守っていました。

その後、無事に地元の病院へ転院されてから5か月が経過した先月。

ご家族と一緒にSさん自らの足で三階の病棟まで歩いて遊びに来てくださった姿を目の当りにした時、信じられないという驚きの気持ちと同時にぐっと胸に熱いものが込み上げ、思わず目頭が熱くなりました。

今は仕事復帰に向けて着々と準備を進めていると話されるSさん。

「私と同じような状況に遭った人の支えになりたい」そうお話しする彼女の瞳の奥は

キラキラと輝き、希望に満ち溢れていた表情を私たちはずっと忘れることはありません。「またいつでも遊びにいらしてください!」

 

あきらめない心が起こした奇跡【2019年6月投稿:山口救命センター長】はこちら↓

 

“あきらめない強い心”が起こした奇跡

 

 

魚沼基幹病院 救命救急・外傷センター
救命センタースタッフが不定期、順不同で書き綴ります。

「今、私が思うこと」

救命センターの看護師のSです。

センター長からブログを書くように依頼があったので、今回は私自身が救命センターに来て思ったことを書きたいと思います。

 

私は看護学校を卒業して、精神科の病院で3年間働き、開院前の基幹病院に就職しました。開院してからは脳外科・呼吸器内科・呼吸器外科・耳鼻科・歯科がある混合病棟に配属されました。精神科病棟にいたため、様々な疾患の知識をつけるため日々勉強し、患者さんに良くなってもらうために頑張りました。

 

そして開院から3年目、救命センターへの異動の辞令が出ました。

『重症な患者しかいない病棟』というイメージがあり、正直「マジか・・・」と思いました。

 

今でこそ、それなりに慣れましたが、やはり入院する患者さんは、かなりの重症患者さんだったり、病気やけがの発症から間もない急性期の患者さんばかりです。内科・外科・小児から高齢者まで色々な人が入院し、当然のように人工呼吸器が稼働している。大変な手術の後の患者さんの入室、見たことのない医療機器がいっぱいあるし・・・と緊張と不安から「仕事に行きたくないな」と思う日もしばらく続きました。

今もわからないことや未経験な事がまだまだありますが、優しい先生方や経験豊富な先輩方、頼りになる若いスタッフのおかげで何とかやっていけています。救命センターの看護師は重症患者を担当するので幅広い知識や技術が求められ、かなりのプレッシャーがあると思いますが、ここのスタッフは、ベテラン、若手関係なく勉強熱心だと思いました。

自分自身もとても良い刺激になっています。

 

基幹病院に就職してから妻に出会い、息子もできて以前よりも忙しいですが充実した生活を送っています。

そして、救命センターに異動して重症・急性期の患者さんを担当できるようになったことは自分の世界が広がり、自信になりました。

重症な患者さんの看護をしたい人や現在の環境に慣れすぎてしまった人は来てみるといい刺激になるかもしれません。ぜひ、救命センターへ来てみてください!

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絶対に損はさせません! 雪下ろし転落防止講演会

救命救急センター医師山口征吾です。こんにちは。

 

今年も、雪下ろし転落防止講演会を開催します。

 

毎冬、魚沼地域ではたくさんの方が屋根の雪下ろし中に転落しています。

中には死亡する方、重い後遺症が残る方もいます。

 

この講演会では

少ない予算で、どうすれば屋根から落ちないで済むか?

ということを中心に進めていきます。

 

令和元年11月2日(土)14:00~16:20

魚沼市小出郷文化会館ホール

 

入場無料! 事前予約不要!

 

決して、損はさせません。

みなさん

ご参加お願いします。

 

20191102雪下ろし転落事故防止講演会

 

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凶暴熊、魚沼市中心街に現る!

救命救急センター医師 山口征吾です。

 

10月18日、19日に魚沼市中心街に熊が出現。

初日に4名、翌日早朝に2名の合計6名の方が襲撃されました。

 

救急隊からの連絡を受けた私は、

「また熊外傷か!」と叫びました。

 

被害現場が近いことから1匹の熊によるものと考えられています。

街のど真ん中での被害で、市民を恐怖のどん底に陥れました。

 

ヘリが低空を飛び、パトカーや消防車両などがパトロールのため巡回。

エリアメールでは外出を控えるようメッセージが流れました。

 

関係者の必死の努力がありました。

魚沼市を震撼させた熊は19日に猟友会によって駆除されました。

熊は体長約1.3mの雄でした。

ニュース映像を見ると、パトカーに襲いかかり、走行中の車両に向かってくるなど、かなり凶暴な熊と思われます。

 

被害にあった方は全員、頭もしくは顔面を激しく損傷しています。

熊は賢い動物で、急所を襲ってきます。

頭部と顔面は最も狙われる部位です。

熊は力が大変強く、爪も鋭いです。

腕を一振りすれば、人の皮膚などひとたまりもありません。

 

顔面外傷は形成外科的な処置が必要になり、当院では対応できません。

3名の方が長岡市と新潟市の病院へ搬送になりました。

 

今年は山の木の実が不作で、里に熊が降りてきているようです。

熊の目撃情報が相次いでいます。被害者も多いです。

 

熊の被害を防ぐためには

  • 庭の柿の実などをさっさと収穫しておく
  • 熊と目があったら、目をそらさない
  • 山に入るときには、熊鈴やラジオなどを鳴らす
  • 山に入るときには杖やストックなど、武器としても使用できるものを持参する
  • ひとりではなく、複数でいると襲われにくい

などがありますが、状況や熊の個体差もあるので、一概には言えません。

 

十分、注意してください。

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新潟初開催‼過酷なレースに参加してきました~

こんにちは 看護師の濱浦です

普段から県内の楽しそうなイベントには積極的に参加していまして

9/15、なんだか面白そうなイベントに参加してきました~!

    

その名もスパルタンレース!

名前の通りとてもスパルタなレースです(笑)

テレビで時折やってる“SASUKE”のようなレースです。

国内でも何回か開催されていますが、結論。

今回のレースは過去最大に過酷なレースだったそうです(汗)

どんなレースだったかいくつか写真を載せていきます

 

スタート地点からあまり見たくない光景が…

この勾配が2.5㎞続きます(笑)

 

2㎞登ると、湯沢の町がこんなに小さく(汗)

苦しい登りを超えると、高い壁を越えたり、25㎏程の土嚢を100m先まで運んだり

最後には燃えたぎる炎を越えてきました~(笑)

途中で救急車のサイレンが聞こえたような、、聞こえなかったような。。(笑)

参加した私たちもゴールの時には達成感に包まれ、いい思い出となりました~♪

新潟、特に魚沼地域はとても賑わいが出てきています!

実は楽しそうなイベントを沢山やっているので皆さんも色々参加してみてください!

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ウォーオーオー!!

こんにちは

救命救急センター医師の山口征吾です

 

Cさんは大柄な若い男性

交通事故で、救急搬送されてきました

 

乗っていたクルマが大破する大きな事故です

検査を一通りします

幸いにもケガはありません

 

ただし、スピードが出すぎています

救急外来のベッドに横になったままで

警察官から事情聴取を受けています

 

すると、その時です

 

ウォーオーオー!!

ガチャーン

 

叫び声とモニター機器の倒れる音

突然、Cさんは暴れ始めます

 

すぐに、男性看護師、警備員を招集

初めからいた警察官とともに、Cさんを押さえます

 

Cさんはとても力が強く、暴れるのを抑えるのは大変です

1人対複数人は、卑怯じゃないかという声もありますが、そんなことはありません

 

写真は、少し落ち着いてからのものです

 

結局、Cさんは未治療の精神疾患であったことが判明

入院のうえ、治療が開始されました

 

救急外来では、時に暴れる患者さんがいます

けいれん後や意識障害、急性アルコール中毒など多岐にわたります

 

救急外来では、防犯カメラや各種対応機器を備えています

リスクの高い患者さんには、警備員をあらかじめ、近くで待機してもらいます

 

暴れようと思って、暴れている人はいません

病気がそうさせているのです

病気を憎んで、ひとを憎まず

 

定期的に、患者さんの暴言暴力対応の講習会を開いています

スタッフのみなさん、参加お願いします

 

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「実習に来ました!!」

こんにちは、看護師の入田です。

 

現在、私は魚沼基幹病院のキャリア支援制度を利用し、都内の大学院へ通っています。

大学院では、急性・重症患者看護専門看護師になるために学習しています。

今回、8月19日~9月6日(3週間)実習のために、魚沼基幹病院のACUへ戻ってきました。

 

私は大学院の実習で、全部で6カ所の病院を体験しました。

その実習のなかで気がつくことができた、魚沼基幹病院ACUの良いところを発表します。

 

景色が良い集中治療室!!

「田舎だから当然でしょ。」と思うかもしれませんが、これは患者さんのからだにも大きな影響を与えます。ACUのような集中治療室は、器械の光や音などによって、日常とは大きく異なる環境にあります。このような環境が1つの原因となって、「せん妄」という脳の障害を引き起こしてしまいます。せん妄を予防するためにACUスタッフは、この景色を活用しています。

通常のベッドの向きでは景色が患者さんの背中側にあるため見えません。しかし、病状が落ち着き、命を守っていた器械が外れてきたら、患者さんが景色を見られるようにベッドを動かし、日常を感じてもらっています。

 

これはほんの1つの例ですが、ACUスタッフは患者さんの病状回復と家族の支援のために、いつも良い看護は何かな?と考えています。

 

私は、スタッフが患者さん、家族に最善の看護が提供できるように、お手伝いしていきたいと思います。

 

3週間、ありがとうございました。

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DMAT隊員になって初出動!

こんにちは、救命センター看護師の池田です。

 

みなさん、6月18日にあった山形沖地震を覚えているかと思います。

その際、私は初めてDMATとして出動をしました!

DMATとは災害医療派遣チームのことです。

(DMATの詳細については過去の救命センターブログをご参照ください)

新潟・山形地震 魚沼基幹病院DMAT出動

看護師を目指し始めてからずっと憧れていたDMAT隊員になることができ、今回が初めての出動でした。

その時のことを少しお話したいと思います。

 

深夜の出発でしたが、あまりの緊張で道中全く眠くなることなく、災害地に到着しました。

被災地の被害は少なく医療ニーズは満たされていたため待機という形で、病院に戻りました。

「自分の身を守るためには何が必要か?」

「被災地での必要物品は?」

「傷病者のトリアージのやり方は?」など

訓練で行ったことを実際に準備し、再確認を行うことができ、現場での活動はありませんでしたがとても良い経験になりました。

私にとっては大きな一歩だったと思います。

 

今後も災害発生時には今回の活動を生かし、さらにスムーズに対応できるように心掛けていきたいと思います。

帰りの車の中、みんなで食べたパンの味は一生忘れません!!

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ふくろう物語

こんにちは

救命救急センター医師の山口征吾です。

 

今回は、野生動物とスタッフとの心温まるお話です。

 

看護師Bさん

ある日、夜勤のため魚沼基幹病院にクルマを走らせていました。

 

すると、なんと

道路の真ん中にふくろうが1匹とまっていました。

クルマが近づいても、逃げません。

 

このままでは、ひいてしまいます。

仕方がないので、クルマから降りて

そーっと、ふくろうに近づきました。

 

するどい口ばしでつつかれたら、困るなあ

そうなったら、救急外来で手当てをしてもらおう

そう思いながら、手を伸ばします。

 

ふくろうは全く逃げようともしません。

そのままBさんの腕に抱かれました。

 

どうも、ふくろうは傷ついていた様です。

少しも暴れることもなく、Bさんに介抱されます。

 

まもなく、ふくろうは元気を取り戻します。

Bさんの肩に乗っかり、ありがとうと言っているようです

 

最後に、Bさんの頭のうえに移動

頭のてっぺんから、元気よく山に戻っていきました。

 

飛び立つときに爪が頭皮に食い込んで、とても痛かったそうです。

でも、ふくろうが回復して、よかったです。

 

Bさんは以前にも、通勤中に大きなカエルをつかまえました。

野生動物とコミュニケーションがとれるのかも

 

今度は、このふくろうが恩返しに来てくれるかもしれませんね。

 

大自然にいだかれた魚沼基幹病院です。

都会の喧騒に疲れた医療関係者のみなさん

ここに戻ってきませんか?

Uターン、Iターンをお待ちしています。

 

 

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重症熱中症は氷水にジャボーン!

こんにちは、救命救急センター医師の山口征吾です。

 

今回は、こわい熱中症のお話です。

 

魚沼基幹病院では、スポーツ中の重症熱中症患者さんが時々搬送されてきます。

 

先日、搬送されてきたのは、登山中の50代男性Aさんです。

登山経験豊富な彼は今までもたくさんの山を制覇してきたとのことです。

 

その日は、気温こそ平地で30℃程度でしたが、とても湿度が高く、風もなく、汗が噴き出すようでした。

 

登山中のAさんは途中から不調を訴えます。

フラフラし、転んでみたり、登山道から滑り落ちたり。

 

そのうちに足腰が、立たなくなり、とうとう動けなくなってしまいました。

 

数分後に反応が悪くなり、けいれんが始まります。

山中なので、病院までは、とても遠いです。

 

同僚から119番通報がされました。

要請をうけた消防は、消防防災ヘリに連絡をします。

 

当日はあいにく雲が多く、消防防災ヘリの飛行は困難を極めます。

 

地上の救助隊は登山道を上り、要救助者Aさんを発見。

 

熱中症と判断した救助隊は、可能な限り、冷却をこころみます。

 

ホットラインが伝えます。

体温は41℃を超えているということと

けいれんが止まらないということ。                                                                        

 

新潟空港を離陸した消防防災ヘリは、雲の切れ間を縫って、ようやくピックアップポイントに到着。

 

無事、Aさんをヘリ内にホイストし、ヘリ内に収容します。

 

当院の屋上ヘリポートまでは10分です。

 

屋上で待ち構えていた私たち救命センタースタッフは用意しておいた大量の氷でAさんの身体を覆います。

 

ストレッチャーを走らせ、処置ができる救急外来に急ぎます。

まだけいれんが続いていています。

意識はなく、非常に危険な状態です。

呼吸もうまくできていません。

 

これは、予想以上に悪いぞ!

 

仮に救命できたとしても、意識が戻らない可能性が高いです。

 

救急外来で、静脈ラインをとり、けいれん止めのクスリを注入します。

すぐに、けんれんは止まりました。

 

皮膚は、冷たく、蒼白でした。

体表の温度は全く、あてになりません。

直腸に温度計を入れます。

これが深部体温といって、正確な体温です。

表示された体温は41.2℃。

 

予想通り、かなり高いな!

 

そのまま気管挿管をして、人工呼吸をします。

あらかじめ用意しておいた簡易水槽内にAさんを移動させ、大量の氷水を投入。

 

推定水温は10℃以下。

 

直腸温はゆっくりと低下していきます。

 

ようやく直腸温は38.8℃を切りました。

下げ過ぎは、これまた有害です。

よし、上げよう!

 

たまたまいた別件の救急隊員の力もかりて、冷たくなったAさんをストレッチャーに戻します。

 

そこから、集中治療室で濃厚な治療を続けました。

 

数時間後、Aさんはぼんやりと開眼できるようになりました。

 

もしかしたら、うまくいくかもしれない!

 

さらに、数時間後 Aさんはしっかりと開眼しました。

 

わかりますか?

 

コクリとうなずきます。

 

手を握って!

 

ゆっくり、けれどもしっかり、握ってくれます。

 

やりました!

 

すっかり意識がもどりました。

 

意識がもどる確率は3%くらいかなと考えていた、私たちは大喜びしました。

 

この氷水にジャポーンの治療は実は日本では、あまり普及していません。

 

中等症くらいまでの熱中症は、霧吹きで水をかけながら、扇風機の風をあてる方法が有名で、普及しています。

 

ただし、これは重症には効果が弱いです。

 

日本では、この比較的安価で、効果のある治療が軽んじられています。

 

重症であるにもかかわらず、霧吹きに扇風機などの治療がおこなわれることが多いです。

 

または特殊なカテーテルを使用した、高額な治療がおこなわれたりしています。準備に時間がかかり、とてもこの氷水にジャポーンには勝てないです。

 

今回のAさんはこの氷水にジャポーン治療をしなかったら、今ころは植物状態であったと思います。

 

私たちはこの治療の普及活動をしていきたいと考えています。

 

※ご本人の承諾の上で、ブログに掲載しました。

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