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魚沼基幹病院 救命救急・外傷センター
救命センタースタッフが不定期、順不同で書き綴ります。

人生で一番雪に苛まれた日

12月19日--少し前のことになりますが、覚えていますか?

この日、新潟でどんな事があったか皆さんは思い出せますか?

 

こんにちは。看護師の濱浦です。

12月19日は県内広範囲で雪による立ち往生が起きた日です。

お察しの通り、この日バッチリ立ち往生に巻き込まれました。この件について取り上げさせてください。

※相当キツかったため、当時の写真はありません。ご容赦ください。

 

私は長岡から通勤しており、この日は夜勤勤務の予定でした。

18時頃まで仮眠をとるなどして過ごす予定でしたが、高速道路が通行止めとの通知を受け、早々に下道での移動を決意。14時頃に家を出ました。

 

16時--国道17号線への合流直前から中々進まなくなります。

ようやく17号線に合流したと思ったら、私の車がスタックし、後続車の方に手伝っていただいて何とか脱出。出勤時間に間に合わない雰囲気プンプンです。職場に連絡しました。

 

18時頃--2時間で2km程しか進んでいない。職場まで、まだ40km近くあります。

 

21時(遅刻が確定)--この頃には完全に止まっていました。スタック車も続々と発生し、何台も手伝いに入りました。

また、国道沿いは施設が全く無い為、トイレと水の確保に困りました。

(路肩で用を足してる人もいたなぁ。。。笑)

私は、尿意はこなかったものの、水が尽き、選択肢に【雪を口にする】が頭に浮かんでいました。

ガソリン節約の為、まとまった距離を進める時以外は、エンジンを切って待機していました。

進む事も戻る事も地獄のため、このまま病院に向かうことを上司に連絡しました。

 

24時(自宅を出てから10時間後)--小千谷市から先に進めず、自衛隊が一台一台救援物資を届けてくれました。

待望の水もようやく手に入りました。JAXAから宇宙食にも認定されたゼリーも貰いました。

Amazonでも売っているらしい🤔気になる方はぜひ。

 

 

4時(自宅を出てから14時間後)--川口あたりまで来ましたが、車のガソリン目盛りが0に。

そして、眠気も限界になりました。職場に連絡し、ここで出勤を断念。

コンビニの駐車場で仮眠を取らせてもらい、近くのガソリンスタンドが開くのを待ちました。

その後、給油を済ませて今度は長岡へ向かいました。

国道17号線はもうこりごりなので、別の道を選択。前日よりは渋滞も解消されていました。

 

それでも3時間程かかってなんとか帰宅。

以上、延べ21時間の格闘でした。

しんどかったですが、立ち往生時のガソリンの節約法など、良い勉強になりました。

 

これも災害の一つです。

3.11を迎えるにあたり、「日本全国、いつどこで災害が起こるかわからない」とつくづく、思い知らされます。

この機会に様々な災害に対して、どのような対策ができるか考えてみませんか?

 

魚沼基幹病院 救命救急・外傷センター
救命センタースタッフが不定期、順不同で書き綴ります。

寒さ厳しい季節の「熱い男の熱中症にかける熱い、暑い、熱い物語」

救命救急センター医師山口です。

 

4か月ほど前のことです。

分厚い封筒が届きました。

以下要約と抜粋です。

 

お手紙の差出人は63歳の川上さん、兵庫県で小さな通販会社を営む男性。

モトクロスが趣味。

危険なスポーツであるため事故現場にも多く遭遇。

救護知識を独学で勉強、自費で救護機材などを購入し、救護活動をするようになりました。

熱い男、川上さんは「危険なスポーツを選択した者の義務」と考えたそうです。

200件以上も現場で救護活動をして、重症熱中症にも立ち会いました。

 

モトクロスのコースは山の中にあって、救急車を呼んでもすぐには来ません。

勉強熱心な川上さんは、早くから海外では冷水浴が重症熱中症の治療の主流になってきていることを知っていました。

まだ日本ではそのような方法は普及していない頃です。

現場に偶然居合わせた現役看護師さんに「冷水に漬けることができたらなあ」と話しかけたところ「そんな事をしたら心臓麻痺起こすよ!」と冷笑され、くやしい思いをしました。

 

そんなあるとき、川上さんは以前の救命センターブログ記事「重症熱中症患者は氷水にジャボーン」を読んで、大変な衝撃をうけました。

「熱中症から命を救うにはこれしかない!」と。

 

モトクロス場でも冷水浴に使えるものはないか、いろいろ探しましたがありませんでした。

結局、何と自分で作ることにしました。

 

それからは苦難の連続です。

いろいろな会社に話をもちかけますが、鼻で笑われることや門前払いは数え切れず・・・

何度も心が折れそうになったそうです。

 

コンセプトは以下を満たす簡易浴槽

  • 小さく携帯できる
  • 少ない水で効率よく冷却できる
  • すぐに展開できる

 

試行錯誤が続きます。

そして想いもモトクロスだけでなく、すべてのスポーツの熱中症を何とかしたいに。

いつしか3年が経っていました。

ついに試作品が完成。

 

この度、初号機P-PEC(ピーペック)が完成しました。

何と川上さんのご厚意で、当院に寄贈していただきました。

 

先日、宅急便で送られてきたP-PECをみて、びっくりです。

小さい!

 

 

使ってみました。

簡単に展開できます。あっという間に開きます。

 

 

水もかなり少ない量(80L)で済みます。

ポリタンク4杯の水とクーラーボックスに氷を用意しておけば、どんなところでもOKです。

 

これはすごい!

川上さんの熱い情熱がつまったP-PEC

完璧です。脱帽です。

 

6月から始まる地域のマラソン大会などには設置したいと思います。

読者のみなさんにもお願いです。夏のスポーツイベントなどで救急車がすぐに来ない現場には、ぜひご検討ください。

 

川上さんのお手紙にありました。

「この製品を開発する強烈なきっかけを与えて下さった山口先生のブログがなければ、この製品は決して完成し得なかった物です。開発中に何度も心が折れそうになった時、先生のブログの一文を思い出し、心の支えにして頑張って参りました。」

 

私たちにとっても、これ以上のうれしいお言葉はありません。

お手紙を読み終えて、涙が止まりませんでした。

 

地球温暖化で今まで以上に熱中症対策が必要になってきています。

多くの方に関心を持っていただきたいです。

▼P-PEC公式ページ
https://profit.co.jp/p-pec/
 
▼P-PEC 体験動画(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=A2EVY3pfc-U

 

※当ブログでは特定の企業や、製品を推奨する立場をとっていません。

製品開発の経緯や川上さんの情熱、製品の完成度の高さからあえて掲載いたしました。

 

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