呼吸器疾患とは、口、喉から気管、気管支を経て肺に至る気道と、これらに接する胸膜や縦隔に起こる病気のことをいいます。肺炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、間質性肺炎、肺がんなどが代表的な疾患です。呼吸器には多くの疾患が含まれ、またひとりの人が複数の疾患を併せ持つこともあるため、正しい診断にたどり着くのに時間がかかったり適切な治療の選択に迷ったりすることも稀ではありません。また呼吸器科は、呼吸器感染症である肺炎を扱うことから、肺炎以外の感染症、たとえば敗血症などの治療や診断にも対応します。特に、様々な治療に伴う日和見感染症は複雑な発症様式や検査成績を示すことが多く、慎重かつ迅速な診断と治療が必要です。
新潟県には医科大学が一校しかなく、県内の呼吸器・感染症診療のほとんどは新潟大学呼吸器・感染症科で研修を受けた医師、あるいは同科からの派遣医師が担当しています。魚沼基幹病院呼吸器・感染症内科はこのネットワークを十分に活かし、大学病院と変わらない質の高い診療を提供します。
疾患名 | 内容 |
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肺炎 |
口、鼻から侵入した細菌やウイルスなどの病原体が、気管支や肺に炎症を起こし症状をきたすのが肺炎です。肺炎はありふれた疾患ですが致命的となることもあり、日本人の死亡原因の上位を占めています。肺炎の死亡率はとくに高齢者で高く、75歳を過ぎると急激に増加します。特に加齢に伴う唾液分泌量の低下や、口腔・咽頭分泌物のくり返される誤嚥により肺炎が引き起こされます(誤嚥性肺炎)。我が国の現状に沿った治療指針として、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎のガイドラインが公表されています。 |
慢性閉塞性肺疾患 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入することでおこる肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症するいわば生活習慣病ともいえるものです。COPDは、本邦では死亡原因の9位、男性では7位を占めています。重いものを持ったり階段を昇るときなど、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や、何ヶ月も続く咳や痰などが主な症状です。一部の症例では、喘鳴や発作性呼吸困難など気管支喘息の様な症状を合併する場合もあります。 |
気管支喘息 | 気管支喘息は、空気の通りみちである気管支がさまざまな刺激に敏感になり、炎症がひきおこされて狭くなるために息苦しさを感じる病気です。我が国では小児の5~7%、成人では3~5%が罹っています。高齢になって初めて罹患する方もいます。炎症によって粘り気の強い痰が増え、気管支の壁がむくみ、加えて気管支を取り囲んでいる筋肉が収縮して気管支を狭くします。咳や痰が出やすくなり、息をする時にゼーゼー、ヒューヒューという音(ぜんめい、喘鳴)が聞こえるのが特徴的です。 |
間質性肺炎 | 肺は、肺胞というブドウの房のような小さな袋がたくさん集まってできています。間質性肺炎は、この肺胞の壁に炎症が起きたり、炎症が不完全に治ることで線維化していく病気です。肺では肺胞の壁を通して酸素を身体の中に取り込みますが、この壁が固く厚くなるために酸素を取り込みづらくなり、重いものを持ったり階段を昇るときなどに息切れを感じるようになります。間質性肺炎の原因はさまざまで、膠原病、じん肺、放射線治療、アレルギー性のものなどがありますが、原因不明のものを特発性間質性肺炎といいます。 |
肺がん |
肺がんは肺に発生する悪性腫瘍ですが、他の部位からの転移ではなく肺そのものから発生したものを“肺がん”と呼んでいます。肺がんは、早期にみつかれば手術で完全に治すことができますが、進行してから発見された場合は、放射線治療や抗がん剤治療、さらに手術を組み合わせた治療が選択されます。全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの一つです。最近、肺がんに効き目のある新しい薬が次々開発され、肺がんの治療は今大きな曲がり角を迎えています。 |
稀少肺疾患 |
リンパ脈管筋腫症は、LAM細胞と呼ばれる細胞が肺や腎臓などでゆっくりと増える病気です。肺では、LAM細胞が増えるに伴い嚢胞と呼ばれる孔がたくさんでき、徐々に息が切れるようになります。シロリムスという薬剤が有効なのですが、副作用が出やすいため慎重に使用する必要があります。 肺胞蛋白症は、肺の中に脂質や蛋白が異常に貯まるため呼吸が苦しくなる疾患です。9割を占める自己免疫性肺胞蛋白症は50歳代の男性に多く、約4割はなんらかの治療を要し、約2割は長期間の酸素吸入療法が必要となります。 |
令和3年度(2021.4~2022.3)
論文(原著)
Bamba Y, Nagano K, Moro H, Ogata H, Hakamata M, Shibata S, Koizumi T, Aoki N, Ohshima Y, Watanabe S, Nakamura T, Kobayashi S, Hoshiyama Y, Koya T, Takada T, Kikuchi T.
Efficacy of the new β-D-glucan measurement kit for diagnosing invasive fungal infections, as compared with that of four conventional kits.
PLoS One 16(8): e0255172, 2021.
論文(症例報告)
Takada T, Asakawa K, Barrios R.
A Japanese-American female with rapidly progressive interstitial lung disease associated with clinically amyopathic dermatomyositis.
Clin Rhematol 40(3): 1159-1165, 2021.
著書など
高田俊範.
溶接工肺
別冊日本臨牀No.19 呼吸器症候群(第3版)Ⅲ,246-249頁,日本臨床社,2021.
学会・研究会・講演会
大橋和政、伊藤竜、高田俊範.
広範な肺野浸潤影を認め、剖検で血管内リンパ腫と診断された一例.
第86回呼吸器合同北陸地方会(一般演題)
(新潟,2021年5月30日)
研究費(科学研究費)
高田俊範:分担 基盤研究費(C)20K08537 2020~2022年度
血球吸着モデルを用いたLAM患者におけるシロリムス最適薬用量決定法の提案
高田俊範:分担 基盤研究費(C)20K08536 2020~2022年度
肺MAC症におけるバイオマーカーCXCL10の有用性について
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